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大分地方裁判所中津支部 昭和53年(ワ)99号 判決 1979年4月02日

原告

河野和彦

ほか二名

被告

池田君則

ほか一名

主文

被告らは各自原告河野和彦に対し金四三万一五六〇円、同河野国彦に対し金四一万五九五二円、同河野チエ子に対し金一〇万一八五四円および右各金員に対する昭和五二年一月五日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

原告その余の請求を棄却する。

訴訟費用は二分しその一を原告らの、その余を被告らの負担とする。

事実

第一当事者の求めた判決

一  原告ら

被告らは各自原告河野和彦に対し金一、〇六一、六二〇円、同河野国彦に対し金八二一、五五六円、同河野チエ子に対し金八五一、三六一円および右各金員に対する昭和五二年一月五日から完済に至るまで年五分の割合による各金員を支払え。

訴訟費用は被告らの負担とする。

二  被告ら

原告らの請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

第二主張

(請求原因)

一  事故の発生

1 日時 昭和五二年一月四日午前一一時二〇分ころ

2 場所 宇佐市大字松崎五八六番地先県道上

3 加害車 軽四輪乗用自動車(八大分三六一六号)

運転者被告池田君則

同乗者被告池田国義

4 被害車 普通乗用自動車(大分五五も一一一五号)

運転者原告河野和彦

同乗者原告河野国彦、同河野チエ子

5 熊様 追突

6 傷害 原告らはいずれも頸椎捻挫の傷害を受け、原告和彦は入院三四日、通院九日、原告国彦は入院三四日、通院一〇日、原告チエ子は入院三六日、通院一二日の治療を受けた。

二  責任

1 被告池田君則

被告君則は加害車を運転して豊後高田方面から中津方面に向つて時速五〇キロメートルで進行し前記事故地点に差しかかつたところ、運転中は前車の動静に十分注意して前車が停止したときはこれに応じた措置をとるべき注意義務があるのにこれを怠たり、考えごとをしながら前方を十分注意しないで進行した過失により自車前方で停止した訴外木村順一運転の普通乗用自動車に自車前部を衝突させ、同車をさらに前方で停車していた被害車に追突させたのであるから民法七〇九条により原告らに生じた損害を賠償すべき責任がある。

2 被告池田国義

(1) 被告国義は加害車を保有し、かつ運行の用に供していたのであるから自動車損害賠償保障法三条により、原告らに生じた損害のうちその身体障害によつて生じた部分を賠償する責任がある。

(2) 被告国義は昭和五二年一月二〇日原告らとの間で右事故により被害車に生じた損害を金五〇万円とみること、その支払いは同月二五日金三〇万円、同年二月二五日および三月二五日に金一〇万円宛支払う旨契約した。

三  損害

(一) 原告和彦 合計金一〇六万一六二〇円

1 治療費 金九万八五〇円

原告和彦は国立中津病院に治療費として右金額を支払つた。

2 入院雑費 金一万七〇〇〇円

原告和彦は前記のとおり入院治療を受けた。一日あたり金五〇〇円として計算。

3 通院交通費 金一万三一四〇円

前記のとおり通院治療を受けたがバス代に往復一回金一四六〇円を要した。

4 通院雑費 金一八〇〇円

通院一回あたり金二〇〇円の支出を余儀なくされた。

5 示談交渉費 金七二六〇円

被告君則と交渉するため福岡市まで出かけた。鉄道料金(金五五〇〇円)とタクシー代(金一七六〇円)の合計。

6 休業補償 金二万一五七〇円

原告和彦は消防士として勤務するものであるが、治療期間中勤務を休みそのため昭和五二年二月分は特殊勤務手当、休日勤務手当、通勤手当合計一万二一〇〇円を支給されなかつた他、同年六月支給されたボーナスは欠勤分として金九四七〇円減額された。

7 慰藉料 金二四万円

前記傷害の程度、入院期間から精神的苦痛を慰藉するには右金額が相当である。

8 自動車代 金五〇万円

本件事故により破損した被害車の修理費および価値の減少を考慮すると右金額になる。

9 弁護士費用 金一七万円

(二) 原告国彦 合計金八二万一五五六円

1 治療費 金八万九四八〇円

2 入院雑費 金一万七〇〇〇円

3 通院交通費 金一万四六〇〇円

4 通院雑費 金二〇〇〇円

5 示談交渉費 金二万七三四〇円

福岡市までの鉄道料金および被告君則、同国義に対する電話代(合計金二万一八四〇円)の合計。

6 休業補償 金二六万一一三六円

原告国彦は訴外有限会社計屋醤油店で稼働し平均日収金四二二八円を支給されていたところ、本件事故による負傷のため、六二日間欠勤し稼働できなかつたため右金額の損害を受けた。

7 慰藉料 金二四万円

8 弁護士費用 金一七万円

(三) 原告チエ子 合計金九五万一三六一円

1 治療費 金一〇万六三三四円

2 入院雑費 金一万八〇〇〇円

3 通院交通費 金一万七五二〇円

4 通院雑費 金二四〇〇円

5 休業補償 金三八万七一〇七円

原告チエ子は農業に従事しているところ、前記入院期間中稼働できなかつたので、同年代の女子の平均給与一日金三二五三円で計算すると同人の損害は右金額になる。

6 慰藉料 金二五万円

7 弁護士費用 金一七万円

四  填補

原告らは被告国義から昭和五二年一月二〇日見舞金一〇万円の支払いを受けたので、原告チエ子の損害に充当した。

五  よつて被告らに対し、原告和彦、同国彦は右損害金と、原告チエ子は右損害金から右金一〇万円を控除した金八五万一三六一円といずれも右金員に対する本件事故の翌日たる昭和五二年一月五日から完済に至るまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

(答弁)

請求原因一の事実は傷害の点を否認し、その余の点は認める。本件事故の態様からみれば原告ら主張の傷害が生じるはずがない。

同二1の事実は衝突した状態は認めるが、被告君則の過失は否認する。

同二2(1)の事実は認める。同(2)の事実は否認する。

同三の事実は争う。

同四の事実は認める。

(被告らの主張)

一  被告国義の抗弁

1 意思表示の取消

被告国義が昭和五二年一月二〇日本件事故による被害車の損害を金五〇万円として、これを支払う旨意思表示をしたのは原告らの強迫によるものである。即ち被告国義は同日まで原告らから何度も電話で要求を受けノイローゼになつていたところ、更に原告らは同日夜原告ら病院において右のような意思表示をしなければ自宅に帰さないなどと申し向けて強迫しこれに畏怖した被告国義において右意思表示をなしたものである。よつて被告国義は昭和五三年一一月一七日第七回口頭弁論において右意思表示を取消す旨の意思表示をした。

2 無効

仮に右事実が認められないとしても、被告国義の前記意思表示には要素の錯誤がある。即ち被害車の本件事故による損害は殆んど修理を要しない程度であるのに被告国義は原告らの主張どおり右修理には金五〇万円を要するものと誤信し前記意思表示をしたもので、被告国義の意思表示には要素の錯誤があり無効である。

二  原告らの傷害の点について

原告らはいずれも本件事故により頸椎捻挫の傷害を負つたと主張する。しかし頸椎捻挫が交通事故により生じるのは、追突等による衝撃のため急激な加速で前進する車の乗員の頸部が一旦取残され過伸展を強制され次いで車の減速時に頸椎自身の弾性によるなどの原因で屈曲が起きるような場合であると言われている。しかし本件では加害車は一度訴外木村運転の車に衝突し同車が押出されて被害車に追突したもので被害者の衝撃は小さく、また原告和彦は停車中サイドブレーキを引いたうえさらにブレーキペダルを踏んでいたのであるから被害車は本件事故によつても全然前方に移動していない。従つて事故態様からみても原告らに頸椎捻挫が起きる状態ではなかつた。

また、原告らのいう自覚症状はいわゆる鞭打ち症の自覚症状とは異つてるうえ、原告チエ子を除いては何らの他覚症状もなく、同原告の他覚的異常も頸椎に骨棘形成ありというにすぎず、これが本件事故によるものか単なる頸椎の老化現象の一つのあらわれであるのか明らかでない。従つて、原告らの症状が本件事故により受けた傷害によるものであるとは考えられない。

(被告らの主張に対する答弁)

被告国義の抗弁一の事実はいずれも否認する。原告らは強迫したことはない。

被告らの主張二については争う。被害車は本件事故により前に二メートル押し出されたもので頸椎捻挫を生じる可能性はあつたし、現に右事故により前記傷害を受けたものである。

第三証拠〔略〕

理由

一  請求原因一の事実は原告らが本件事故によつて原告ら主張の傷害を受けたとする点を除いて当事者間に争いがない。

二1  そこで、右の点について判断するため、本件事故の態様を検討する。いずれも成立に争いのない甲第一号証、第一〇号証の一〇、一一、一五、一八、二一、三四、三八、三九、原告ら各本人および被告池田君則本人尋問の結果(いずれも後記採用しない部分を除く。)によると次の事実が認められる。

原告和彦は被害車を運転して本件現場付近に差しかかつた。同所付近はアスフアルト舗装された平たんな道路である。先行車が右折しようとして対向車の通過を待つていたため、その後方に停車した。被害車の後方には訴外木村順一運転の普通乗用自動車(以下木村車とする。)が停止していた。被告和彦は時速五〇キロメートル位で進行中前方に対する注意を怠たり、先行する木村車が停止しているのに気づいたのは約一四・二メートルの距離になつてからである。同被告は急制動をかけたが間に合わず、同車に追突した。木村車は前に押し出され被害車に追突した。木村車が加害車に追突された地点と同車が被害車に追突した地点との間隔は五・一メートルである。木村車の長さは三・八二メートルであるから同車は一・二八メートル押し出されたことになる。被害車は木村車から前に押し出された。停車した被害車と木村車の間隔は〇・二ないし〇・三メートルである。従つて被害車が押し出された距離は少くとも〇・二ないし〇・三メートルはあると認められる。木村車の車種は小型であるニツサンチエリーであり、被害車は小型車の中では最も大きい種類のニツサンスカイラインであり、加害車は三菱ミニカ三六〇ccである。加害車は前面がへこみラジエーター部分も同様にへこんだが、木村車の車体後部はバンバーの下の部分が損傷を受けた。木村車の前部は運転席側のバンバーが少し内側に入つた。被害車の後部はバンバーが少しへこみ、トランク部分も損傷を受けたが、その損傷は軽微なものであつた。

原告和彦本人尋問の結果中には同原告は停車中サイドブレーキを引いたうえ足踏みブレーキを踏んでいたが、被害車は追突され二ないし三メートル前方に押し出され、路面にそれくらいスリツプ痕が着いていたとする表現があるが、右表現部分は前認定のとおり加害車、木村車および被害車の大きさ、事故の態様からみて誇大であると考えられ措信しない。また被告君則本人尋問の結果中には木村車は〇・三ないし〇・四メートル動いたとする表現があるが前認定の事故の態様、殊に加害車が制動するまでの時速が約五〇キロメートルであり制動しながらも約一五メートルの位置で追突していることから考え直ちに採用できない。

右認定の事実によれば被害車は直接には加害車から追突されはしなかつたものの木村車に追突されてわずかではあるが前方に押し出された事実が認められ、その乗員も木村車の存在により弱められたとはいえやはりいくらかの衝撃を受けたものと認めることができる。

2  原告らの負傷について。

いずれも弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる甲第二ないし四号証の各一ないし三、第一〇号証の二六、二七、二九、三〇、三二、三三、四二ないし四四、いずれも成立に争いのない甲第一〇号証の一、二、一四、一七、二〇、二二、二五、二八、三一、四〇、四一、乙第六ないし八号証、および各原告本人尋問の結果によれば次の事実が認められる。

原告和彦、同国彦はいずれも本件事故後五日くらいして肩が凝つたり、首が動かなくなるなどの異常を覚え、同月一二日訴外吉久医院に入院した。原告チエ子は事故後鼻血が出たり、吐気、目まいを覚えるなどの症状が出、同月一〇日右病院に入院した。同病院では湿布、牽引等の治療を受けた。原告らは同月二三日同病院を退院し、訴外畦元医院に入院した。更に同年二月一日訴外国立中津病院整形外科に転院し、同月一二日退院したが、その後も原告和彦は九日間、同国彦は一〇日間、原告チエ子は一二日間通院して治療を受けた。同病院では薬物の投与を受け、温熱療法を受けた。右認定を左右するに足る証拠はない。

3  入院治療の必要性

前掲乙第六ないし八号証によれば、最後に原告らを治療した医師南尚次は原告らの負傷を治療するため入院させ、治療の経過を観察する必要がある旨認めてた事実が認められる。これに対し、右認定に反して成立に争いのない乙第一号証、弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる乙第二ないし五号証が存在し、右各書証によれば、その前に原告らを診察した医師吉久重利、同畦元直次郎らは入院治療の必要性を認めず退院を勧めた事実が認められる。しかし前記各証拠から南医師は整形外科医であるに対し吉久医師は外科、産婦人科医、畦元医師は外科医であることが認められ、本件の症病である頸椎捻挫が通常整形外科の領域に属することを考えれば、右各書証の存在をもつてしても前認定を覆えすには至らず、他にこれを覆えすに足る証拠はない。

4  交通事故による頸椎捻挫の傷害は被告ら主張のとおりの経過により生じるものであること一般に認められているものであるが、被害車は少しの距離でも移動すれば、右傷害は生じることがあるのもまた一般に認められている。これを本件にみると前認定のとおり被害車は、少しではあるが前に押し出されているのであるから、本件事故により原告らに右傷害が生じる可能性はあつたのであり、これに右医師の診断の結果を合わせれば原告らは本件事故により負傷し、入院治療を余儀なくされたものと認めることができる。しかし前認定のとおり本件事故による衝撃はそう大きいものではないこと、負傷自体も入院治療の必要性に疑問を持たれる程度のものであつたことが認められる。

三  責任

1  被告和彦

本件事故の態様は前認定(二1)のとおりであるから同被告は前方不注視の過失により本件事故を起したものと認められ、民法七〇九条により原告らに生じた損害を賠償する責任があるものと認められる。

2  被告国義

(1)  同被告は本件加害車を保有し運行の用に供していたこと当事者間に争いがないので自動車損害賠償保障法三条により、原告らに生じた損害のうち身体傷害に基づくものを賠償する責任があるものと認められる。

(2)  同被告の自動車代弁償契約について。

成立に争いのない甲第六号証、原告和彦、同国彦および被告国義各本人尋問の結果によれば次の事実が認められる。即ち、原告らは吉久医院入院中から何度も被告国義に電話をして同医院病室に呼び出し示談の交渉をした。同被告は昭和五二年一月二〇日は午後七時ごろから知り合いの訴外高橋某と二人で交渉に臨んだ。右高橋は途中で原告チエ子の要求により退室し、以後は原告ら三人および原告らが同席を求めた原告らの知合い訴外森本某と同被告との間で交渉が行われた。同日夜一一時半ごろ同被告は原告らの要求を容れ、金五〇万円を支払う約束をしその旨原告和彦の手帳(甲第六号証)に書いた。その内容は原告側はまず新車の購入を要求し、これができない場合は修理代と事故による減価分の合計として金五〇万円を要求し、被告国義はその程度の損害が生じたものと考え、これに同意した。本件事故による被害車の損傷は木村車の損傷よりもはるかに小さいものであること前認定のとおりである。訴外木村については車の修理代と価格落ち分とを合わせ金一四万円を同被告が支払うことで和解ができた。被害車の損害は価格落ちの分を含め金一〇万円程度と認められる。(原告ら各本人尋問の結果中には修理代だけで金二〇万円を要するとの表現があるが、前認定の事故の態様から大きな損傷が生じたとは認められないこと、木村車の被害額が右程度であること、前掲各証拠から原告らは被害車が被告らに見られることを嫌い訴外高橋が写した被害車のフイルムを焼却させていることなどを考え右表現部分は採用しない。)

右認定の事実によれば被告国義が原告らとした契約には価格の見方という重大な点に錯誤があるものと認められその範囲で効力がないものと認められる。しかし同被告は原告らに生じた損害を賠償する旨契約しており、その点については何らの錯誤はないのであるから、同被告は実際に原告らに生じた損害については右契約に従つて支払うというのが、同人の契約時の真意に合うものと考えられるところ、その損害は前認定のとおり金一〇万円を要するものと認められる。

被告らの抗弁は右の限度で理由があるものと認められるが本件全証拠によるも、被告国義が原告らに強迫されて右契約を結んだことを認めることはできない。

四  損害

1  原告和彦 合計金二九万二五六〇円

(1)  治療費 金九万八五〇円

原告ら各本人尋問の結果真正に成立したと認められる甲第六号証により認める。

(2)  入院雑費 金一万七〇〇〇円

前認定のとおり合計三四日入院治療を受けたことが認められ、その間一日金五〇〇円の雑費を要したものと認める。

(3)  通院交通費 金一万三一四〇円

原告和彦本人尋問の結果通院に使用したバス代は往復金一四六〇円であることが認められるので、前認定の通院日数を乗じると右金額になる。

(4)  休業補償 金二万一五七〇円

原告和彦本人尋問の結果およびこれにより真正に成立したと認められる甲第七号証の一ないし三によれば、同原告は高田広域消防組合に消防士として勤務しているが、本件事故による負傷治療のため欠勤を余儀なくされ、手当、ボーナスから合計して右金額の減額を受け損害を蒙つたものと認められる。

(5)  慰藉料 金五万円

前認定のとおり入院治療を受け、その間かなりの精神的苦痛を覚えたものと認められるが、前認定の本件事故の程度、負傷の程度および前掲乙第一ないし五号証から窺われる入院中の態度を考えると慰藉料としては右金額が相当と認められる。

(6)  自動車代 金一〇万円

前認定のとおり(三2(2))。

(7)  通院雑費

交通費の他に本件事故に基づく雑支出が必要であつたことを認めるに足る証拠はない。

(8)  示談交渉費(交通費)

原告ら本人尋問の結果によれば、原告和彦と同国彦は被告君則と交渉するため福岡市に行つたことが認められる。しかし右各証拠および被告君則本人尋問の結果によれば、同原告らは同被告と打合わせもせず福岡市に出かけ、結局面会もしていない事実が認められ、果して真剣に示談に行つたのか疑問があり、またその必要性にも疑問がある。

2  原告国彦 合計金三七万八九五二円

(1)  治療費 金八万九四八〇円

(2)  入院雑費 金一万七〇〇〇円

(3)  通院交通費 金一万四六〇〇円

前認定のとおり同原告は一〇日間通院したことが認められる。

(4)  休業補償 金一八万六〇三二円

原告国彦本人尋問の結果およびこれにより真正に成立したと認められる甲第八号証によれば、同原告は訴外有限会社計屋醤油店で稼働し平均日給金四二二八円を得ていたことが認められる。また同原告本人尋問の結果によれば同人は本件事故による負傷のため六二日間休業したことが窺われるが、前認定のとおり同原告の入、通院期間は合計四四日間であることが認められるが、それ以上に休業する必要があつたことを認めるに足る証拠はない。従つて前記日給額に四四日間を乗じた金額を同人の休業による損害と認める。

(5)  慰藉料 金五万円

(6)  通院雑費

認められないこと前認定のとおり(四1(7))。

(7)  示談交渉費 金二万一八四〇円

示談に要した費用のうち交通費については前に判断したとおりである(四1(8))。

原告和彦本人尋問の結果およびこれにより真正に成立したと認められる甲第一二号証によれば原告らは入院中、宇佐市居住の被告国義や福岡市居住の被告君則に対し電話で損害賠償を要求し、同被告らがなかなかこれに応じなかつたため度々電話し、その費用は原告国彦が負担し右金額になつたものと認められる。その必要性については疑問の余地もあるが右認定を左右するに足りない。

3  原告チエ子 合計金一九万一八五四円

(1)  治療費 金一〇万六三三四円

(2)  入院雑費 金一万八〇〇〇円

前認定のとおりの入院期間三六日で計算。

(3)  通院交通費 金一万七五二〇円

前認定のとおり通院期間一二日で計算。

(4)  慰藉料 金五万円

(5)  休業補償

原告チエ子、同国彦各本人尋問の結果によれば同原告は農業に従事していたこと、その規模は田約二反であり、これを一家で耕作していたものであることが認められる。しかし同原告が前認定の期間稼働しなかつたことから直ちに損害が生じたものと認めることはできず、他にこれを認めるに足る証拠はない。

(6)  通院雑費

前認定のとおり(四1(7))。

五  被告らが原告らに見舞金として金一〇万円を支払い、原告らはこれを原告チエ子の損害に充当したこと当事者間に争いがない。

六  弁論の全趣旨から原告らは本件訴訟代理人に本訴の遂行を委任した事実が認められる。前認定の認容額からすれば原告らが右代理人に支払う弁護士費用のうち原告和彦については金二万九〇〇〇円、同国彦については金三万七、〇〇〇円、同チエ子については金一万円を損害として被告らに請求しうるものと認める。

七  以上のとおりであるから原告らの本訴請求のうち、被告らに対し、前記損害と右弁護士費用を合わせた、原告和彦については金三二万一五六〇円、同国彦については金四一万五九五二円、同チエ子については金一〇万一八五四円および右各金員に対する本件事故の翌日である昭和五二年一月五日から完済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるから認容し、その余は失当として棄却することとし、訴訟費用について民事訴訟法八九条九二条九三条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 甲斐誠)

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